研究内容のご紹介

核酸を用いたコンディショニングマーカーの探索

 近年、血液や体液からリキッドバイオプシーとして抽出が可能となったcell-freeDNA(cfDNA)は、癌診断をはじめとした様々な疾患の非侵襲的なバイオマーカーとして期待されています。cfDNAは何らかの刺激によって細胞外へ放出され、体内を循環するDNA断片です。図1に示すように、主に癌組織やダメージを受けた細胞から放出されますが、健常者でも血球系細胞に由来するcfDNAが体内を循環しています。

 

 

本研究室では、運動や肥満患者ににおけるcfDNAの体内動態に注目しています。そして、図2で示すような起源・機序などの生理学的意義の検証を行うことで、新規バイオマーカーへの応用の可能性を探索しているところです。

 この研究成果は、急増する生活習慣病をモニタリングする指標となり、スポーツ現場や、医療現場での運動療法による運動効果を客観的に即時的に判断できると考えています。cfDNAを用いたバイオマーカーの開発はオーダーメイドの運動療法が確立できる可能性を秘めており、健康増進に役立てることを目標として研究しています。

新規核酸バイオマーカー cfDNAのオーダーメイド運動処方への応用 

近年、血中cfDNAが、健康な人を対象とした様々な運動直後で一過性の増加を示すことが多数報告されています。血中cfDNA濃度は Ⅰ)運動開始と中止に速やかに反応する、Ⅱ)運動量と濃度が比例する、Ⅲ)運動に伴う炎症、疲労・ストレス、筋損傷のすべてのファクターを単独で検出できる、という3つの特徴があります。また、運動により上昇するcfDNAは、アポトーシスやネクローシス由来の他に、白血球細胞由来である可能性があります。

しかし、cfDNAの放出源やメカニズムについては様々な可能性があり、運動による血中cfDNAの変化についての生理的意義は依然として不明のままです。運動バイオマーカーとして有用なものとするには多くの情報が必要となり、運動の強度、時間、様式、性別を区別し、調査していく必要があると考えられます。また、関連する既存の運動マーカー(遅発性に上昇するマーカー)や因子との関連を明らかにすることができれば、より体内の状態を把握する手助けとなるのではないでしょうか。

本研究室ではヒトや細胞を対象とし、様々な運動条件やコンディションによる運動誘発性cfDNAのメカニズムを探索することで、運動新規バイオマーカーへの応用を目指しています。

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